京山幸太 2023年の目標 2023年4月号より

目次

1.2023年の目標

2.お笑いの活動

1.2023年の目標

―前回、通信を出せなかったのでまずは今年の目標を改めてお聞きかせください。

幸:いざ言われると…。先日、師匠の独演会の帰りに師匠と話をしてた時に、師匠から賞を取れたのが良かったとか、俺の思ってた十年後の幸太よりはだいぶええとは言っていただいたんです。けど、強いて言えば節だと。もっとメリハリも付けれるし、他の家の節もパッと出てくる引き出しの多さがないとか。それが出来たら、あとはお前の経験で進化していけると言ってくださってて。「今の節もうまいけど、うまい程度じゃアカンし、考えてやってるのが分かるし、自分で付けた節は流れが悪くてホンマに酔わせる節にはなってない。」そんな風に言われて、だから、節をもっと知って、できるようになりたいと思います。

―体力的にはどんどん向上していく時期ですから、それに向けて芸を磨いていかないといけないですよね。

幸:たぶん四十代が芸と体力がマッチするピークかと思います。

―それに向けて、重点的に磨くのが節の使い方。

幸:節では極甲の音を使えるとかもあります。

―極甲も目指すところなんですね。

幸:稽古で出せても、本番で使えないですし、いざ使うとなると、本番中にも身構えてしまうので、それも無意識に出来ないといけないです。

あと、すごい大きな変化で言うと、酒を控えてます。多少飲んでますけど、二日酔いする程に飲むことはなくなりました。それですごい体調良くて、声もめちゃくちゃ調子良くて。こんなに違うのかと。

―それなら、もっと早く控えていればよかったのに(笑)

幸:本当にそうですよね。芸人として、飲むのは推奨されることでもあったので。これはSMAの担当の方が言ってたんですけど、「今の芸人は最高のネタと最高のトークが生きていくために必要で、昔とは違う。昔は分母も少なくて、飲んで遊んで、その中の才能ある人間が生き残ったけど、今は才能あっても努力が必要や」と。だから、売れるために、飲んでる場合じゃないと思うようになりました。

―大谷翔平もニューヨークの街を歩いたことないらしいですからね。

幸:そうなんですか。でも、これ危険なのが、アスリートのようなストイックになり過ぎるのもどうかで。欠点があるのも芸人としての魅力になるので。自分も酒はやめれてないですし。でも、悪影響になってた部分はあったと思います。声の部分で。

昔の芸人さんで放蕩三昧してたのが魅力というのもめっちゃ分かるんです。でも、時代が変わったという風に思ってて。まぁ、今後も飲み過ぎる日はあると思いますけど。

―それくらいで良いんですよ。安心します(笑)

幸:減らそうとは思ってます。その代わりの趣味が筋トレと銭湯通いになりました。酒で時を加速させなくても、意外と楽しいもんだと気づき出しました。

―今までは生き急いでましたか。

幸:そんなこともないつもりですけどね(笑)

これは師匠に言われたことでもあるんですよ。それこそ独演会の帰りでした。

「お前このままやったらいいけど、まだしくじる可能性は秘めてる。酒と女はお前は気をつけなアカンぞ」とこういうの初めて言われたんですよ。

もう三年とか五年とか区切りをつけて、自制できるようにしろと。

―厳しい。釘刺された感じですね。

幸:厳しいんですけど、自分はどっかでそれを言ってほしいとも思ってて、どっかでストップかけてほしかったんですよね。それを踏ん切りでやめられるし。だから、師匠に言ってもらえてよかったなと思います。そこから減りましたし。

―誰か俺をとめてくれ的な。

幸:けっこう飲んでましたから。

―それでも自分ではやめなかったんですか。

幸:習慣になってたんで。今思えばすごい量飲んでたと思います。ワインは毎日一本空けてたし。

―それは飲み過ぎかもしれないですね…。

幸:だから、控えられてよかったなと思います。ストロングのレモンサワー飲み放題の店に通う生活から抜け出せて。

極端な例えですけど、覚醒剤で捕まった人がホッとするといのと、同じ部分はあるかもしれないです。

―そういうもんかもしれないですよ。

幸:浪曲をやる上で三十代、四十代で身体を壊してる場合じゃないですし。だから、今年は来るべき三十代、四十代に備えて健康な体作りをします。


2.お笑いの活動

―お笑いの活動の話を聞いていきたいと思います。最近、幸太さんのSNSを見ていると活動が今までよりも活発になっている気がしています。

幸:R-1の準々決勝で落ちたのが本当悔しくて。周りからは四年目で準々決勝まで行けるのは早いと言ってもらえたり、お笑いライブもゲスト枠で呼んでもらえたり、良い面はあるんですけど、自分の中では準決まで行きたかったのと、直前でネタ変えたのが心に残ってて。

―意外とどのネタするかをギリギリまで悩みますよね。

幸:二回戦突破した時も前日くらいにネタ変えたんですよ。

―浪曲を入れるか入れないか悩んでいるような。

幸:準々決勝は入れないネタをやって、ネタ自体があんまりやって、ぶっつけやししゃないですよね。その時に反省したのが、準備不足やったことで。準々決勝の直前に何回かライブがあって、試せてたらまた違った選択ができたはずなので。それで、もっとライブ出なアカンなと思うようになりました。自分でもライブを共同で主催するのが六月から始まる予定です。

―そんなの始まるのですか!

幸:まだ日にちは決まってないですが、4組での合同ライブを始める予定です。

―幸太さん以外はどなたが出演者ですか。

幸:ダンス・ダンス・ダンスさんと単細胞さん、&ゴンザレスさんというスパンキーの事務所の方々とで。ダンス・ダンス・ダンスのとださんと仲良くなって、こういう話になりました。

―楽屋Aでも共演されていた方ですね。

幸:そうです。楽屋Aもとださんに呼んでいただいたんです。ダンス・ダンス・ダンスさんのネタも面白いし、ショーレースで売れることを目標にしてるから、同じ目標があるもの同士いっしょにやろうという流れで。あと、最近は初めて出るフリーライブにも出たりしてます。

―フリーライブとは。

幸:いわゆる地下ライブと言われるやつです。吉本とか事務所のライブ以外のやつ。それにも出れるだけ出ようと思って。(東京の)ソニーのライブも行けるだけ行こうと思ってて。

―これまでは抑えてたのですか。

幸:二か月に一回くらい出てたらいいかなという感じだったんですけど、今は出られるなら毎月でも出たいなと思ってて。それに加えて、事務所の方にお願いして、一日一回だけじゃなくて、一日複数回ライブに出させてもらうようにしてもらって、出れるだけ出るつもりです。ネタを作れるだけ作って、試すだけ試して、次のR-1で絶対勝ち抜けるようにしたいなと思ってます。

―幸太さんはリミットを決めてる分、いつかではなく、早く売れようとする気持ちが強い気がしますね。

幸:R-1にも十年目までの制限がありますし。次で折り返しなので。

―その焦りもありますか。

幸:いちおうステップアップはしてるんで。絶対に自分は決勝行けると信じて、やってますし、行けると思ったんですよね。

―今年は本気で決勝を狙っている感じですね。

幸:できたら今年。二年以内を一つの目標にしてます。

―その期間の設定の仕方が、他の芸人の方よりも集中してやってるのかなと思いますね。

幸:そうですね。

SMAの先輩で「小仲くん」さんという、三十代で薄毛という自分のビジュアルをめちゃくちゃ生かしてる方がいて、自分の持ってるものを生かすところで、自分も結局は浪曲を使わなアカンと思うように最近なりました。「小仲くん」さんに相談した時にも、浪曲で賞を取ってることはすごいし、お笑いの中で浪曲を使うことは負目に感じずにどんどん使っていった方がいいとアドバイスいただいて。浪曲を使わない手はないと思ってます。

―浪曲がそのままお笑いではないかもしれないですが、お笑いの中で浪曲を使っていく。

幸:このネタにどう浪曲を入れたら、ウケるかも分かったりとか。

―お笑いの下地ができてきて、浪曲をどう使うかが分かってきたのですかね。

幸:だから、これまでのことも無駄じゃなかったと思います。一方で、それに早く気づけてたら、準々決勝であんなネタせいへんかったのにとも思います。

二回戦はめっちゃウケたんで、あれを三分のネタに膨らませられてたらよかったのにと思って。そのために色々ネタを作ったり、ライブにも出られるだけ出ようと思ってます。

あと、ミーハーなんですけど、大谷翔平がすごいと思って。

―急に大谷翔平が出てきましたね(笑)

幸:WBCの特番で大谷が曼荼羅チャートを書いてたのを知って、それを自分でも作ってみたんです。「売れる」を真ん中に書いて、「浪曲」「R-1優勝」と書き足していったら、優勝するにはネタも舞台ももっと増やさないアカンといきつきましたね(笑)

―急に過程が見えなくなったですけど(笑)

目標自体は前から思ってたことではありますよね。

幸:R-1優勝までは思ってなかったんですよ。

―それが曼荼羅チャートを作って思い至った?

幸:曼荼羅チャートだけじゃないんですけど、誰が言ってたのかな。バイキングの小峠さんだったかが、決勝を目標にしてるやつは決勝に行けないと言ってて。それで、気がついて、決勝を目標にしてたのを優勝に切り替えました。

R-1まであと八ヶ月しかないから、作ってきたネタを試し練っていく作業やなと思います。

―八ヶ月を「しか」とは前まで言ってなかったように思うんですよね。

幸:三ヶ月前から焦りだしても、残れる訳ないですからね。や団さんのキングオブコント決勝前のブラッシュアップの場とかも見せてもらったんで。こんなにこわだわって作り込むんやなと。

―そういうのも知って、幸太さんの考え方や姿勢も変わってきてるんでしょう。

最近、ツイッターを見ると、ネタに手応えも感じてるように思いましたが、それはどうですか。

幸:ここ一、二週間はそうです。ネタはウケてたんで。でも、一年通して波はあるんで、ちょっとずつ上向きになればいいので、今はたまたま良いということで。

―何か変えた部分とか、ウケるようになったきっなけはありますか。

幸:それは完全に浪曲を使おうとし始めてことですね。

自分が浪曲師であることを言ってから、やるようにし始めて。一コント芸人としてやるのではなく。浪曲師なのに、こんなことをやるっていうギャップも武器になるかなと。

先日、ライブのエンディングトークでむちゃぶりされて、言ったことが意外とウケて、これもライブ出ないと気づかなかったなと思いますし。

―何がウケるかって、実践で試さないと分からないですよね。

幸:そうなんですよね。天才なら分かるのかもしれないですけど、自分は分からないですね。あと、やっぱり自分は理論派じゃないので。じっと考えてても、思いつかないんですよ。R-1でウケたネタも一日かからずに思いついたネタで、自分の場合は複雑に考えるより、思いついたことをやる方がええなって思いました。だから、自分はそれを舞台で試して、ブラッシュアップしていくしかないと思ってます。


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