真山隼人 断酒なぜ 東京独演会1周年(2023年5月通信より)

目次

1.断酒の理由

2.東京のツキイチ独演会一周年

3.タカラヅヤ夜話の感想

1.断酒の理由

―先日、向こう百日間の断酒をするとツイッターで拝見しました。現在三日目です。断酒を始めたきっかけなどをお聞かせください。

隼:願掛けなんです。古今亭志ん朝師匠が、身内に色々あった時に、願掛けで一番好きな物を断つと、鰻を断ったんです。志ん朝師匠は粋な人なので、十日とか百日とかそんなんはアカンと、本当に生涯鰻を食べなかったそうなんです。それで最後の晩餐は「おれは鰻が食いていな」と言って亡くなったそうで。

その話を聞いて、ぼくも好きな物をいっぺん断とうと。それが何かと考えたら、浪曲…。でも、そしたら給料なくなるし。どうしようかと思って、お酒やと。

―そもそも願掛けをするほどに、困ったり、悩んでいることがありましたか。

隼:自分の中では悩んでるというほどではないですけど、気持ちの持ちようですよね。

それと、毎日お酒を飲んで、お酒の力を借りなアカンのかと思ったんですよ。飲んでるよりも、飲まれることの方が多なったんちゃうかと思ったんです。お酒飲んで騒いでるのではなく、これは飲まれているのではないかと。

―やらかしたとかではないということですね。

隼:そうです。気持ちの変化ですね。

 酒を飲まなくても酒場に行けるはずやのに、酒を飲まなアカンという固定概念で飲んでいるのではないか、お茶でも楽しめるハズやと。これがまず一つ。

 もう一つは一回身体からお酒を抜いて、リセットして浪曲に打ち込んでみたらどう変わるかということ。

―アルコールが入るとハイになりますし、それを抜いて、ピュアな自分に戻ろうと。

隼:ピュアな自分です!なんのこっちゃですね(笑)

―確かに毎日飲んでると、ずっとアルコールが身体の中にある感じがするのはわかります。百日という日取りに意味はありますか。

隼:人の噂も七十五日と言いますから、噂が無くなるまで七十五日かかるんですよ。だから、噂が流れきるのにも、三十日くらいかかると思って、キリのいい百日の日限で決めました。

―百一日目にこうありたい、こうあってほしいと願うことはありますか。

隼:自分の浪曲がクリーンなスッキリした一途な浪曲になってたらええなと思いますね。

―なるほど。自分の中だけの決め事にせずに、周りにも公言をするところに覚悟を感じますね。隼人さんらしい。

さ:退路を絶ってね。

隼:ツイッターにも書き、フェイスブックにも書き、周りにも言うたんですよ。そしたら、ツイッター見た人から何人かメール来て、「なんでやめるねん」「やめるな」と悪い友達がいるわけですよ(笑)

今朝も「なんか悪いことしたんか?」って吉坊兄さんから電話がかかってきて。みんな悪いことしたって思ってるんですよ。

さ:失敗したから止めると思われてんねんな。

隼:別に誰をしくじってる訳ではないんですよ。

まぁ、そういうことで百日お酒を断ちますけど、ぼくは打ち上げにも出るし、飲み屋も行くわけですよ。

―百日の間にあらゆる誘惑があるかと思いますが、それにも打ち勝って、心も強くなりそうです。

隼:そういう意味で心の修行の一環でもありますね。

―百日後が楽しみですね。ぼくも一監視役として見守りたいと思います。


2.東京のツキイチ独演会一周年

―ツキイチ独演会の一周年記念公演が四月に無事終えられました。そこで一年の振り返りをしていきたいと思います。そもそもこの会を始めた時の思いを教えてください。

隼:にぎわい座の布目さんにこんなんやったらええと言うてもらって、太福兄さんにも相談して始めたんです。ネタ帳を見返してみると、最初の頃は大阪から東京に行くという気があって、番組自体も慢心というか。そういのが見られますね。

―東京に行ってかましたろ的な。

隼:そういう思いがない事はなかったんです。

―結果的に大阪の会とは違う番組になっていたわけですね。

隼:でも、コロナで倒れた後から、やっぱり真面目に淡々とやるように変わりました。

―コロナがきっかけですか。

隼:コロナで一回中止になって、それまでお客さんもコンスタントに来てたんですけど、ガクッと減ったんですよ。どんどん減っていくんで、どうしようかと考えた時に、大阪から浪速のもんが来てますではなく、心から浪曲を聞いてもらおうと思ったんです。東京とか大阪とか関係なく。この気持ちの変化がネタ帳をみたら分かりますね。

気づいたら平均で65人くらいは来るような会になってて。

―すごいですね。規模的には大阪よりも大きい。

隼:そうですね。ネタを厳選して選ぶようになってからは、お客さんも「このネタをやるなら聞きに行こう」って人が増えましたね。来月も演歌浪曲をやるから来るという予約が何件か入ってて、ちゃんとネタを出すことが大切やと思いました。

 嬉しいですよね。(木馬亭で月一で独演会をすることが)東京でも太福兄さんしかやってないことを、大阪の自分には無理かなとも思ったんですよ。でも、若気の至りは若いうちにしか出来へんと思ってやったら、おかげさまで皆さん応援してくださって。

 面白いのが、太福兄さんが、ぼくがツキイチをやると知って、東京の若手にも声を掛けたんですよ。負けずに頑張れと。それで始めた子が何人かいて、そういう意味では東京の浪曲界も活性化して、こっちも勉強なるし、いいことづくめやと思いますよ。

―そうですね。直接弟子を育てずとも、今の隼人さんの立場で浪曲界に貢献していますね。今の時代のやり方を見せるのは特に若手のトップランナーとして隼人さんの役割ですし。

 さっきの話で、東京にかましたろうという思いから、純粋に浪曲を聞かせるように心境が変化したのは浪曲の稲川出世相撲にも似てますよね。このネタを一周年の会でもされてましたし。

隼:あのネタを久々にくった時に、心境の変化があったかもしれないですね。自分を励ましてくれる台本だったのかなと思いますね。

―台本と自分の人生が重なってくることがあるんですよね。

隼:ありますね。心の肩衣もそうですし。今の自分の心持ちの変化で外題を選ぶのも一つの芸やなと。

 話をツキイチに戻すと、ツキイチの成果として花形演芸会に出て銀賞を獲れたことは大きいですよ。やっぱり東京で活動してるからこそ、声をかけてもらえたんだと思うんです。

―そこで成果が出たのも嬉しいですね。大阪で評価されてきて、これから東京あるいは全国でも通用すると証明できたのかなと。

隼:それで二年目もツキイチを続けるか迷ってたんですよ。でも、浦太郎師匠の葬式で澤師匠に背中を押してもらったり、銀賞ももらって自信も得て、こないだ三年目の木馬亭も押さえました。だから、できるところまでやりますよ。

―すごいですね。とにかく前向いて、できることを積み重ねて、レベルアップしていってますね。

あと、太福さんのことも聞いてもいいですか。一周年記念公演で初めてゲストを呼び、それが太福さんでした。ゲストに選ばれた理由を教えてください。

隼:先輩なんですけど、同じ土俵で戦ってるいい仲間なんだと思ってます。向こうはどんどん上に行ってはりますけどね。義理人情の世界やなと。

さ:エッセイ浪曲でもやったしね。

隼:これは一周年記念の時に初めて公に言うたんですけど、ツキイチの一回目が本来あるはずやった、ぼくが倒れてる間も「隼人くん大丈夫か?」とずっと気にかけてくださってて。

さ:お見舞いも行くって言うてね。コロナやから面会が無理なんやけど。それでも明日大阪行くから、行けるんやったら行きたいって連絡してきてくれたり。

隼:それでぼくが復帰して、ツキイチの一回目をやった時に、木馬の女将が来て「隼人くん今日は会場費ええよ」って言うたんですよ。

―そうなんですか。

隼:「お見舞いやって言うて、太福くんが払って行ったで」って。

―えー。漢気やば。普通に聞いてて感動しますね。

さ:二人で号泣でね。女将も「カッコ良すぎるね」って言うて(笑)

隼:だから、何としてでもゲストに呼びたかったんですよ。本当やったら、二月に一周年やったんですよ。けど、太福兄さんの日が合わなかったんで四月にしたんです。

さ:それでその時のエッセイ浪曲で公にしたんです。お客さんも感動してましたよ。でも、太福くんは自分の出番で出た時に「会場費なんて払ってませんから」って言うんです。

―それもかっこいいなぁ(笑)。隼人さんが最高の出しどころで発表したのも粋ですし。この話を聞けてよかったです。


3.タカラヅヤ夜話の感想

―トークイベントに出演する珍しい仕事だったかと思いますが、いかがでしたか。

隼:やっぱり、草葉さんと小竹さんの双璧がいる中で、ぼくが居ていいかなと思ったんですけど、話もできて面白かったですね。

―宝塚歌劇に詳しくないお客さんからも楽しかったと声をいただいていて、それは二人ほど詳しくない隼人さんの視点で話してくれたも影響していると思います。

さ:面白かったよ。あの時の、あの演出がすごいみたいな話に臨場感があって、私もそれを見たいと思いました。

隼:またやりたいですね。

隼:あと、小竹さんの本も宝塚知らない人も読んだら面白いですよ。

―その本の中で、隼人さんが浪曲にしたいと思う話があったと聞きましたが。

隼:高砂松子さんですね。タカラジェンヌって普通結婚したり、子どもできたら、辞めなアカンところを、タカラジェンヌを続けようとした方がいたんです。

―興味深いし、実現したら面白そうですね。

隼:ぼく自身もまだどういう感じで浪曲にしたらいいか見えてなくて、ちゃんと書きたいと思う分。宝塚の著作もあたってみて、しっかり考えたいと思いますね。

それと小竹さんのパフォーマンスの写真とかを見て、あの人の謎だった部分がなんとなく分かった気がしましたね。小竹さんの浪曲を作るために、阪田さんにも朝日放送内で色々聞いて回ってもらって。

―私も小竹さんという人がどんな人なのか、周りからどう思われているのか知れて楽しかったです。

隼:あの人がぼくのお客さん第一号なんですよ。お客さん第一号が誰か分かってることも珍しいですし、その小竹さんの浪曲ができたのは感無量でしたね。こんなことなかなかないですよ。

―小竹さんも今でも隼人さんを応援し続けてますし、小竹さんも嬉しかったでしょうね。

 今日はたくさんお話していただきありがとうございました。

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