京山幸太 意気込み「パンク侍、斬られて候」三本勝負(2023年6月号より)

1.「パンク侍、斬られて候」三本勝負

―今回企画したきっかけが、昨年に幸太さんにインタビューをした時に浪曲「パンク侍、斬られて候」を自身の定番ネタにしたい、後世にも残るネタにしたいと話していたのを覚えていたからなのですが、その気持ちは今も変わらずありますか。

幸:もちろんそうです。そのためにはどうしていくのか。原作も好きやから、それから離れ過ぎたくもないですけど、浪曲としてもっとよくなる形もあると思うし。書いた時は自分のできる最大限のことはしたつもりなんで、それプラス他の人からの意見で思いつくこともあるかなと思いますね。

―なるほど。今年に入ってから「パンク侍」を舞台ではあまりやっていないですか。

幸:かけてないですね。浪曲三舞台で前編はやりましたけど、それくらいですかね。

―ぜひ今回たくさんかけていただいて、かけ慣れるみたいになればなと思うのですが(笑)

今は「パンク侍」をかける時には会の雰囲気だったり、お客さんの層を選ぶなんてことがありますか。

幸:それがあるんでしょうね。初見の方にどこまで通じるのかとか。敬老会ではできないですし。

―いつでもできるネタにはなってないですもんね。

幸:そうですね。一方で、十人斬りとかはどこでもできるネタになってて、十人斬りはかなり史実からは離れてる形になってるので、「パンク侍」もある程度原作から離れていかないと浪曲としてはダメなのかもしれないですね。でも、町田康さん(作者)がいる作品なので、難しいところやなと思いますね。

―そこは慎重になりますか。

幸:預かってるものですから。あんまり変え過ぎて、別の作品になってしまうのは違いますし。そこのバランスですね。

―もし、自由にアレンジできるなら、こう変えたいみたい展開やイメージはありますか。

幸:自分も町田康さんのファンとして読んでしまってるから、今のが書けるベストではあるんで、他の刺激をもらいたいと思ってます。

―それだと、まさに今回の企画でゲストの意見やお客さんのリアクションがネタを磨いてくヒントになりそうですね。

幸:それでちょっとずつ変わっていくかもしれないですね。今から大きく変える部分は思いつかないですけど、意見や反応で変わっていくのかなぁ。ここが節でよかったのか、啖呵の方がよかったのかとかもあるかもしれないですし。

―元々節だった箇所を啖呵にするような変更はこれまでもやってましたよね。

幸:それはけっこう前編の方でやってました。節で言うより、パパッと啖呵で言った方がいいなと思うところがあったりして。先代も十人斬りを色んなやり方でやってるので、それはやってるうちに自然とできるのかもしれないですね。

―先代の幸枝若師匠の音源を聴くと、同じ演題で色んなパターンがありますもんね。そういう意味で、「パンク侍」は幸太さんがすごく自由にアレンジしていきやすいネタかなと思いました。

幸:そうですね。こうしないといけないという決まりはないですし。

―先代の幸枝若師匠は話の構成までアレンジしてるので、幸太さんもそういうレベルでこのネタを自由にできるのかと思います。

幸:そうですね。もっとやり込んでいけば。

お笑いのネタを書いてると、これを浪曲の演目にも挟めるなと気づくこともあるんで、色々書いていくうちに、「パンク侍」に入れられるものも出てくるかもしれないし、長くやってると相互作用で台本も磨かれていくのかなと思いますね。

それに自分も飽き性なんで、同じことができないから、自然と変わっていくと思います。

逆にどこがお客さんに分かりにくいんでしょう。

―そういところをゲストやお客さんにも聞いてみたいですか。

幸:そうですね。自分でやっててもどこかが難しい気がするんですよね。場面転換が多いのもあるんですかね。

―場面転換は多いですね。

幸:あと、腹ふり党という概念をどう説明するかですね。どうしても説明くさくなってるところをどうしたらいいか。

分かりやすくしたつもりですけど、まだまだできることがあるんでしょうね。

―それぞれの個性的なキャラを手短に伝えていかないといけないのも難しそうです。喋り方とかだけで。

幸:浪曲の良いところなんですけど、浪曲って一つのシーンで、例えば悔しい思いを長いこと言うじゃないですか。かいつまんだらすぐ言えることでも。

映画やアニメも展開が早くなってる今の時代的に、めちゃくちゃ展開とテンポのある浪曲を作りたいという思いも正直あったんです。けど、ビジュアルでの表現が限られてる分、お客さんに伝えるのが難しいのかとも思ったりしてて。現代人が聞いてて、飽きないテンポとか話の展開を浪曲でしたいとはずっと思ってるんです。

―それは探っていってほしいところですね。

幸:展開が多くても、一つ一つが分かりやすければ良いと思いますし。

―映画を倍速で見る人もいる時代ですから。これまでのスピード感や展開を疑うのも大切なことですよね。

幸:難しいところですよ。幸枝若節のバラシで、酔わせるところって一番の聞かせどころだと思うんですけど、今やそれを長く感じる人もいるでしょうし。

―そうなんですね。

幸:話の筋だけを追いたい人なんかはそうだと思います。そういう人に合わせたらむちゃくちゃ小刻みに節と啖呵が入れ替わるものができるかもしれないですし。

―バラシだけ聞きたい人がいるのかと思ったら、それすら長いか。

幸:時代に合わせるべきかも分からないですけど、合わせるなら長いんでしょうね。

―そういう意味で、「パンク侍」に話を戻すと、「パンク侍」を十分尺程度の寄席ネタにするつもりはないですか。

幸:めちゃくちゃ難しいですよね。絶対布教の場面はやりたいし、そこに持っていくまでに最短でも時間がけっこうかかると思うんです。なんせ腹ふり党を説明する手段が…。

今は小説と同じ時系列で語ってるんですけど、そこを変えることで腹ふり党を自然に説明することができるのかもしれないですね。腹ふり党の概念を説明できる何かがあれば。

―腹ふり党をいかに伝えるかが課題の一つかもしれないですね。世の中にないものをいかに分かりやすく、手短に伝えるのか。

幸:そうなんですよね。今そこがあるのかもしれないですね。説明くさいというか。もっと当たり前のものとして、お客さんに届ける方法があるのか。

―腹ふり党の絵が書かれたテーブル掛けを作るとか。

幸:お金かかること(笑)

―みんなが踊り狂ってる場面を絵にしてもらって。

幸:カッコいいでしょうね。人々が踊り狂ってて、その後ろに浪曲師が立つのも教祖のように見えて。いいですね。

でも、やっぱり腹ふり党の概念や物語の設定の伝え方が課題ですね。今まだ説明しちゃってるから。

―町田康さんの文章や世界観を浪曲で伝えるのは相当難しいんでしょうけど、それを幸太さんに期待してます。

幸:やっぱり腹ふりの説明ですね。お客さんが想像しにくいんやと。今話してて、思うようになりました。

―この企画三回ではどんどん新しいことを取り入れてほしいと思ってます。反応を見て、結果的に今回限りになるものがあったとしても。試す場として。

幸:けっこう大変ですね…。思ったより大変でした(笑)


2.十周年独演会

―十周年の会ですが、十周年に対する思いはありますか。幸太さんってあんまり記念日にこだわらないイメージもあるのですが。

幸:記念にこだわらないことないですよ(笑)

―あれ、セレモニー嫌いじゃなかったっけ(笑)

幸:十周年は、「あぁ十周年かぁ」とは思いますよ。やっぱり。早いなと思いますし、入門した時にいつか文楽劇場の舞台に立ちたいと思ってたんです。それがデビューで叶ったんですけど、十周年の舞台でまたそこに立てるのは嬉しいと思いますし。

―デビューの舞台も文楽劇場の小ホールでしたね。

幸:そうです。それに、大阪の独演会で師匠をゲストに声かけしたのも今回初めてですし。一番声かけづらいんですよね。絶対出てくれるんでしょうけど、一番緊張するし、気軽に声かけれないというか。

―実際お声がけした時の師匠はどんか様子でしたか。

幸:「おう出る出る」みたいな。

―軽い感じですか。

幸:軽く。東京に行く時の電車で言ったんだったかな。

―十年だからこそ、ここを見てほしいという点はありますか。

幸:デビューから十年が経って、当時と比べたら節も啖呵も全部違うんで。自分の内面的な緊張の仕方も違いますし。むちゃくちゃ人見知りやったんで。喋るの苦手じゃなくなったと思いますね。

―この十年間の変化はそこですかね。

幸:そうですね。人格が改造された気がしますね。

―誰の影響なんでしょう。

幸:芸能界と大阪人と。ウケなアカンという環境と。

根はそんなに変わらないですけど、常にスイッチ入りっぱなしな気はしますね。それも芸人にとってはいいことだと思ってます。

それで今回の目玉になるのが師匠とのかけ合い浪曲で、今までの人格改造の歴史というか。

―幸太さんが入門してから今までの話ですか。

幸:入門前からですね。浪曲に出会う以前から今までの話をギュッとまとめて演出も入れてやります。

それで、浪曲は古典をその時に一番やりたい演題をやろうと思ってて。

―まさか知恩院。

幸:知恩院だけはないと思います(笑)

明るい会にしたいと思います。今回は賞もないですし、前から好きことをやってますけど、よりいっそう好きなことやりたいなと。

―企画の台本はもうできてるのですか。

幸:ある程度できて、一回師匠にも見てもらって、今仕上げに入ってます。

―当日は師匠が台本にアレンジを加えるかもしれないですよね。

幸:そうですね。掛け合いなんで、あんまりやられ過ぎるとこっちも対応できないですけど。

―そうなったら幸太さんもやりかえすのかと。

幸:多少はありますよね(笑)

―舞台のコントやラップバトルであるような、即興のやり合いも見てみたいです。

幸:舞台のやり合いではないですけど、過去に出番前に師匠から「今日なにすんねん」って言われて、任侠モノって答えたら、「任侠モノやったら、この文句のマクラが合うから、今から覚えてやれ」って出番の直前にいわれて送り出されたこともって。

―そんな急に言われてできるものですか?

幸:できたかどうかはともかく、やらな仕方でないんで。多少は違うこと言ったかもしれないですけど、その場で作りながらやりました。

そんなんで鍛えてくれますし、いい師匠についたなって思いますね。

―それを今度の独演会は幸太さんから仕掛けて、バチバチなところも見たいですね(笑)

幸:そんなことは(笑)

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