京山幸太 今年の展望 2019年2月号より
今回のインタビューでは京山幸太さんに2018年の振り返りや、今年の展望を語っていただいています。雑談のつもりで話していた先日の公演の話が思いがけず盛り上がったため、その話から掲載しております。構成が少々おかしくなっておりますが、リアルな声をお届けするため、そのまま掲載しております。京山幸太の本音をどうぞご覧ください。
目次
1.「吉良の仁吉」から節のこといろいろ
2.2019年の展望
1.2018年振り返り
―1月29日に千日亭で行われた浪曲ナイトに行かせていただきました。その時に幸太さんは「吉良の仁吉」を口演されていましたが、中盤の節でこれまでとは違う節を使ってませんでしたか。
幸:気がつきましたか!
―一時期よく聞いていたので、それと比べて違うなと気がつきました。やはり変えていたのですね。そういう事もあるのですね。
幸:そうですね。幸枝節の憂いの節は、明るいのに暗さもある独特の節の回し方をします。それを使うのが「夕立勘五郎」の中盤の節や会津の小鉄の「文治殺し」で、ヤクザ物の威勢が良いんだけど悲しい雰囲気を表す節なんです。「吉良の仁吉」もその音を使うんですけど、その音さえ使えば何でも良いんです。ここはこうって決めてないし、うちの一門はその時の湧いた気持ちと節を大事にするので、節だけでなく言葉も変えることもあります。
―言葉に関しても昔の言い回しや慣用句を使っている気がしました。
幸:どれかは覚えてないですけど、別のネタからとってきたのかもしれいし、浮かんだから言ったのかもしれないです。節で言うと、例えば仁吉では「必ず、必ず、助太刀はしてくれるなよ」という気持ちのこもった節の文句があります。どんな節を使ってもでも良いんですけど、その時に思いつく自分の自然な気持ちが乗る節をその場でパッと引き出せるかが、うちの一門で一番の経験を問われるところかなと思います。
―前もって自分でアレンジした物を作るのではなく、その場で思いついた節や啖呵をするというスタンスなんですね。
幸:そうです。師匠の「吉良の仁吉」も毎回録ってますけど、毎回全然違います。入門した最初はもちろん見本通り、型通りにやるんですけど、ちょっとずつ崩してもできるようになってきたかなと思います。節で泣けるようになってきたというか。それに、啖呵も褒めてもらえることがちょっと多くなってきて、それは根本的には一緒やと思うんです。台本を読んでしまっている段階やったのが、ちょっとずつ自分の言葉で啖呵も節も言えるようになってきて、そこが影響しているのかなと思います。
―なるほど。舞台や稽古を重ねると、理解が深まる一方で、慣れすぎて言葉をなぞるだけでもできてしまうようにもなると聞いた事があります。そういった時期もあるのでしょうか。
幸:そういう時期もあると思います。でも、何も考えなくても言葉が出るくらいにはならないといけないんです。
―そういう時期を経た上で、気持ちも乗せられるようになってくるということですか。
幸:それくらいよそ事を考えてても、スッと言えるくらいにやってなかったら良い節もでないと思います。あと、まだ自分は考えてしまっているけど、音の高低やメリハリ、強さ、間を意識できるようになってきました。ホンマは意識しなくてもできるようにならなダメなんですけど、「ここは強く、ここは押す」とか考えれるだけ余裕はできてきました。以前は「ここで高い声出るかな」とか「間違わへんかな」とかの不安もありましたが、そういった不安は一切なくなりました。その場でやれるだけも経験とボキャブラリーや節のレパートリーが増えたので。
―自分の芸を客観的に見られるだけの余裕が出てきたのですかね。
幸:一生懸命やるしかなかった頃に比べたら、そういう余裕は出てきたのかもしれないですね。でも、そんなこと考えてるのもまだまだなんです。「ここはこう組み立てていこう」っていう冷静さがまだ残ってるという事です。これは芸人のスタイルにもよると思うんですですけど、うちの師匠は完全に浪曲の世界に入り込んで人格になりきる事が芸やって思ってるんですよね。そういう意味で全然まだまだなんです。そのためにいろんな段階や経験を経て、余計なことを考えずに、気持ちが完全に浪曲に入れるのがゴールの1つやと思ってます。
―なるほど、それでは1月の浪曲ナイトの「吉良の仁吉」の時は節の事を考えながら口演していたのですね。
幸:あの時はけっこう考えてました。考えないと、まだ馴れない事したら音外すかもしれないし。
―浪曲をやりながら次の使う節を考えることもとても難しそうです。次にどんな節を使うのかは何を基準にして選んでいるのでしょうか。話の内容や節の流れですか。
幸:節の流れです。節はアドリブやけど、最低限のルールがあって、この流れできたら甲(かん:浪曲における高音)に上げないとお客さんはスッキリしないなとかもあるんです。そろそろ節を落とす頃やから盛り上げていこうとかも考えます。
―節のことは師匠も教えてくれるのですか。
幸:そうですね。自分で気がつく事もあるし、自分のを聴いて師匠がアドバイスして、それが裏付けになったりします。でも、そんな一個一個教えてくれないです。原理や基礎がわかったから、自分でレパートリーをいっぱい増やしていかないといけない所だと思うんです。
―それでは、あの浪曲ナイトの日だけがいつもと違う節を使っていたわけではないのですね。
幸:最近はどのネタもそうです。いろんな節を考えずにその場でやってみようとする事が多いです。覚えた通りにやろうという意識をなくして、節の流れに任せてやってます。そろそろそういう力も鍛えないといけないし、アドリブでも「あぁいい節やな」と思われる節を本当はできないといけない。今はまだとりあえず音の流れが不自然じゃない程度に1席は何とでもできるレベルかなと思います。もらえることがちょっと多くなってきて、それは根本的には一緒やと思うんです。台本を読んでしまっている段階やったのが、ちょっとずつ自分の言葉で啖呵も節も言えるようになってきて、そこが影響しているのかなと思います。
―なるほど。舞台や稽古を重ねると、理解が深まる一方で、慣れすぎて言葉をなぞるだけでもできてしまうようにもなると聞いた事があります。そういった時期もあるのでしょうか。
幸:そういう時期もあると思います。でも、何も考えなくても言葉が出るくらいにはならないといけないんです。
―そういう時期を経た上で、気持ちも乗せられるようになってくるということですか。
幸:それくらいよそ事を考えてても、スッと言えるくらいにやってなかったら良い節もでないと思います。あと、まだ自分は考えてしまっているけど、音の高低やメリハリ、強さ、間を意識できるようになってきました。ホンマは意識しなくてもできるようにならなダメなんですけど、「ここは強く、ここは押す」とか考えれるだけ余裕はできてきました。以前は「ここで高い声出るかな」とか「間違わへんかな」とかの不安もありましたが、そういった不安は一切なくなりました。その場でやれるだけも経験とボキャブラリーや節のレパートリーが増えたので。
―自分の芸を客観的に見られるだけの余裕が出てきたのですかね。
幸:一生懸命やるしかなかった頃に比べたら、そういう余裕は出てきたのかもしれないですね。でも、そんなこと考えてるのもまだまだなんです。「ここはこう組み立てていこう」っていう冷静さがまだ残ってるということです。これは芸人のスタイルにもよると思うんですですけど、うちの師匠は完全に浪曲の世界に入り込んで人格になりきることが芸やって思ってるんですよね。そういう意味で全然まだまだなんです。そのためにいろんな段階や経験を経て、余計なことを考えずに、気持ちが完全に浪曲に入れるのがゴールの1つやと思ってます。
―なるほど、それでは1月の浪曲ナイトの「吉良の仁吉」の時は節の事を考えながら口演していたのですね。
幸:あの時はけっこう考えてました。考えないと、まだ馴れないことしたら音外すかもしれないし。
―浪曲をやりながら次の使う節を考えることもとても難しそうです。次にどんな節を使うのかは何を基準にして選んでいるのでしょうか。話の内容や節の流れですか。
幸:節の流れです。節はアドリブやけど、最低限のルールがあって、この流れできたら甲(かん:浪曲における高音)に上げないとお客さんはスッキリしないなとかもあるんです。そろそろ節を落とす頃やから盛り上げていこうとかも考えます。
―節のことは師匠も教えてくれるのですか。
幸:そうですね。自分で気がつくこともあるし、自分のを聴いて師匠がアドバイスして、それが裏付けになったりします。でも、そんな一個一個教えてくれないです。原理や基礎がわかったから、自分でレパートリーをいっぱい増やしていかないといけない所だと思うんです。
―それでは、あの浪曲ナイトの日だけがいつもと違う節を使っていたわけではないのですね。
幸:最近はどのネタもそうです。いろんな節を考えずにそのことでやってみようとする事が多いです。覚えた通りにやろうという意識をなくして、節の流れに任せてやってます。そろそろそういう力も鍛えないといけないし、アドリブでも「あぁいい節やな」と思われる節を本当はできないといけない。今はまだとりあえず音の流れが不自然じゃない程度に1席は何とでもできるレベルかなと思います。
2.2019年の展望
―いきなり、浪曲ナイトの話で膨らんでしまいました。さて、まずは2018年の振り返りをしたいと思います。特に印象に残っている公演はありますか。
幸:前座で出演した師匠の木馬亭の独演会ですかね。
―幸太さんと師匠で「寛永三馬術」の続き読みで、幸太さんが「度々平の住み込み」を口演した会ですね。
幸:そうです。それに向けて「度々平住み込み」は覚えたんですよ。実はこの公演の1年以上前から師匠に「お前最近伸び悩んでるな」って言われてました。「お前は2、3年目くらいまではガッと来て、俺負けるんちゃうかなって正直思ったわ。でも、最近は全然うまなってへんな」って。
―そうなんですか!
幸:稽古はそれまで通りしてたんです。でも、自分でもわかるんですよ。良くはなってるんですけど、2、3年目くらいまでの成長してたペースより遅くなってきている。ネタは一昨日から去年にかけて12個増やして数は増えたけど、実力で言うと「またこれができるようなった!」っていう実感はなかったんで。それが、師匠の独演会の前後くらいから、さっきも言ってたみたいに台本を読むのではなく、感情を込めて言葉を語れるようになってきたり、音の高低差やメリハリ、押し引きを考えて節も啖呵も出来始めたかなって気がしてました。
それで師匠の独演会でお客さんから「むちゃくちゃ伸びたな」って言っていただいて。自分の中ではちょっとずつ変わってきてたことなんですけど、それがお客さんに届くという結果にまで繋がったのがその会でした。その後、師匠からも「たしかに上手くなってきたな」って言ってもらえて、最近またやる度に良くなってるなって自分でもわかる気がします。だから、師匠の独演会や自分の独演会があった、11月くらいが自分の殻を破れた時期かなと思います。
―2019年の目標や計画をお伺いしたいのですが、どういう年にしたいとかありますか?具体的に決まっている事とか。
幸:具体的に決まっているのは一門会ですね。妹弟子が2人ともデビューしたので、「兄さん大した事ないな」って思われへんようにちゃんとしなアカンなってのもあります(笑)。
―妹弟子のお2人にはどんな感じで接してるんですか。
幸:こないだ3人で飲みにも行きました。ぼくがお金を出すんで、若菜さんは最初は気ぃ使って「いいんですか?」って聞いてくれるけど、飲み出したら…(笑)。これまで後輩っていなかったんで楽しいですね。
―年上の後輩ですが、接しにくいとかはなさそうですね。
幸:ないですね。若菜さんは特に明るい性格やから面白いし、幸乃さんも年上やけど控えめな人やから立ててくれてるし、質問あれば聞いてくれて、接しにくいとかは全然ないですね。むしろ、舞台とかマクラで妹弟子のことを話せるのが嬉しいです。
―一門会のネタももう考えてるんですか?
幸:ネタはまだ考えてないんですけど、お芝居があるんで、それが楽しみです。また、まだ言えないんですけど、あることを計画してます。それが世に出せるのは今年の末か来年の頭かなと思います。それは浪曲という枠を越えた話で、浪曲を知らない人にまで届くようなあることをしようと今計画してます。
―それ、めちゃくちゃ気になります(笑)。
幸:これ以上はまだ言えないのですが、師匠に今年の目標を聞かれた時には「年末にみんなから叩かれるような事をしたいです」って答えました。やっぱり、ちょっと変わったことをするくらいなら、アンチもつかないし、その分世間からも注目もされない。どうせ新しいことをするんならおもっきり叩かれるようなことして、目立たないといけないと思ってます。
―炎上するくらいの?
幸:炎上くらいで良いと思います。
―幸太さんの精神力なら炎上を跳ね返せそうですね。
幸:全然平気です。石投げられてもいいし(笑)。
―強いですね。でも、その分応援してくれる人も付いてくれると思います。
幸:みんなに好かれたい訳ではないし、今でさえアンチの人はいますからね。それに自分は27歳で売れると思い込んでるんで(笑)。そのためにも計画しています。
―最後にNHKの東西浪曲の話を聞かせてください。師匠や春野恵子さんを紹介するコーナーでパンツ姿の浪曲も披露されていました。反響はどうでしたか。
幸:反響はありましたね。フォロワーも増えましたし。今までのNHKで1番増えた気がします。メッセージも多かったです。
―メッセージはどういう内容ですか。
幸:「見ました」みたいなのから「女性やと思いました」まで色々ですね。それにNHKさんにはよくやらしてくれたなっていう感謝の気持ちです。これぐらい崩してやった方が面白いよって上の世代の人も言ってくれたし。視聴者の方にも印象に残る良い使い方してくれたなって思います。さらに、5年連続出演なんで、それもありがたいです。
―あの演出は幸太さんも考えたんですか。
幸:軽く案を出したのを使ってくれたりしました。女装もやりますよとか、師匠のパンツが派手やって言うたのも自分です。
―自分がパンツ姿になるのは?
幸:それはNHKの人が(笑)。パンツ光らせるのも知らなかったし。
―今後もそんなオファーはありですか。
幸:どんどん言ってくださいって感じです!
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