コラム「京山幸太 入門までの長く短い道のり」2018年8月号より
第2回十三浪曲寄席の出演者であり、偶数月レギュラーの京山幸太。彼は19歳の時に京山幸枝若師匠に入門して、現在入門5年目の24歳です。小学校時代から浪曲に触れ、中学校卒業と同時に入門した同学年の真山隼人とは対照的に、彼は入門まで浪曲とは全く無縁の人生を歩んでいました。今回は彼がいったいどのように浪曲の世界に入っていったのかご紹介します。
中学校では野球部に入る運動少年。坊主頭にするのがどうしても嫌で、エースの特権で免除されていたそう。高校時代からはバンドを結成して、将来音楽で生計を立てたいと思うほど音楽に熱中。ヘビーメタルバンドのボーカルやジャズバンドのベースを担当。また、余談ですが、その音楽遍歴が今でも彼のTシャツの柄やSNSに垣間見える事があり、数年前には世界的ベーシスト・マーカスミラーの公演に興味を示していた。
そんな彼であったが、大学に進学する時期には音楽で生計を立てるという目標にも行き詰まり始める。元々サラリーマンにはなる気がなかった彼はこのモヤモヤを“ある人”に相談。その“ある人”とはキャンディーズの作曲を担当していた穂口雄右先生(代表曲は「春一番」)。もちろん、知り合いだった…訳ではない。ツイッターを通じて、直々に相談。そこで穂口先生から返ってきた言葉が「君は浪曲を聴きなさい」といった内容。
浪曲の存在を知らなかった彼はひとまず自宅で視聴。興味を持ち、浪曲をインターネットで検索すると浪曲親友協会会長の京山幸枝若が浪曲教室を開催しているのを発見、すぐに申し込んだ。そして、その教室で初めて京山幸枝若に出会い、生の浪曲に衝撃を受ける。その場で入門を直訴。浪曲を知ってから、入門を決意するまでの時間が驚くほど早い。もちろん、その場では入門を許されなかった。だが、数か月後には師匠が出した課題をクリアし、無事に入門を認められたのであった。
その後は、人気浪曲師・春野恵子や師匠・京山幸枝若との毎月の3人会や12カ月連続のネタおろしなど今日までの挑戦・成長の物語があるわけではございます。しかし、本日はここまでで、入門後の話はまたいつかのお楽しみに。
「聴きどころ」
浪曲には無縁だった彼が、入門のきっかけにもなったのが「節」の魅力です。今でもお気に入りの演目を選ぶ時は節が基準になるほど。例えば、「安珍清姫」を選ぶ理由は幸玉節が幸枝若節流にアレンジされている節があり、カッコイイから。素人の我々には気がつきにくいポイントですが、この話をすると彼の節への思い入れがよく伝わってきます。(いずれの機会にこの詳細も掲載したいと思います)。
自らが浪曲を口演する時でも、特にこだわるのが浪曲の節において高音を示す甲(かん)の音。自分が出せる最高の音を出すように常に心掛けおり、聴く人がハラハラ・ドキドキして引き込まれていくような節をしたいと言います。
現状の声にも満足しておらず、より高く力強い節を出せるように修業し、舞台でも妥協しないのが彼のブレない姿勢です。本日も高音かつ長い節が続く演目になるかと思います。是非、その点に注目してお楽しみください。
一問一答
Q浪曲師になって良かった事
A応援してもらえる事。毎朝、同じ時間に起きなくても良い事。
Q感動した瞬間
A去年から続けてきた1年間毎月のネタおろしを終えた時
Q今年の目標
A去年ネタおろしした演目を磨いていく
Qお気に入りの演目
A「河内十人斬」「安珍清姫」
Q浪曲以外の趣味
A英語、ミニシアターに行く事、三国志
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