京山幸太 皆様からの質問にお答え 2020年4月号より
新型コロナ影響で観覧中止になった十三浪曲寄席4月公演の通信です。今回の幸太さんへのインタビュー内容はコロナ影響が如実に現れた近況報告と特別企画「皆様からの質問コーナー」です。インタビューの数日前に質問を募集したにも関わらず、沢山のご応募をいただきありがとうございました。私では聞くことができなかった質問ができて、とても楽しいインタビューになりました。
目次
1.近況報告
2.質問:入門関連
3.質問:浪曲関連
4.質問:プライベート
1.近況報告
―まずは最近の話から聞いていきたいと思います。コロナの影響は大きいですか。
幸:今の時点(3/22)で7つ仕事飛んでますが、これでもマシな方です。とは言っても、インタビューとかを除いたら舞台での仕事は13連休中です。
―すごい影響受けてますね。何して過ごしてるのですか。
幸:真面目なのは浪曲音源をデータ化したりしてます。声を出しにカラオケにも行きたいんですけど、ちょっと怖いので毎日は行けてなくて。浪曲以外は映画やR-1観たり、本も読んでますね。最近は三島由紀夫を読んでます。あと、超新作浪曲を書いてました!それが大きかったですね。
―5月9日の独演会に向けた演目ですね。時間ができた分、集中して書くことができましたか。
幸:今までよりも時間かかって今回は十日くらいかかりました。言葉、展開、演出どうしようかなと考えたりして、30分くらいあるネタになりました。それも今から覚えなアカンくて…(笑)。
―それに加えて十三浪曲寄席に向けた新作があるわけですもんね(苦笑)。送っていただいた質問の中にもコロナ関連がありまして、「コロナで気が滅入る日々ですが 最近一番笑ったことを教えてください(宇都さん)」という質問があります。
幸:難しい!すべらない話ってことですよね⁉(笑)
―自分が笑ったことやから、楽しかったことで良いのではないですか。
幸:基本毎日飲んでるから笑ってますけどね。まあクレヨンしんちゃんの映画ですかね。
―クレヨンしんちゃんのどの映画ですか。
幸:めちゃくちゃ見てます。『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』とか。
―最初の頃のやつですね。
幸:『雲黒斎の野望』とか『新婚旅行ハリケーン』とか『カンフーボーイズ』とか。
―思った以上に沢山観てますね。
幸:そうですね。あと、R-1もですね。あれ面白かったです。外に出ないからエピソードが増えないんですよね。
―人にも会わずですか。
幸:会わないですね。
―やっぱり結論はしんちゃんですかね。しんちゃんって何が面白いですか。
幸:面白いじゃないですか!(笑)。
―面白さに理屈はないですか(笑)。
幸:そんな5歳児おらへんやろという時点で面白いし、映画のストーリーはちょっと泣かせてきたりするし。
―なるほど。私も見直してみます(笑)。
2.皆様からの質問:入門関係
―それではここからはいただいた質問からどんどん聞いていきます。まずは入門に関することです。
「初めて浪曲を聞いたときのことを覚えていますか?(岡村さん)」
幸:覚えてます!音源と生とそれぞれありますが、最初に音源で聞いたのはYouTubeにあった三波春夫と村田英雄の忠臣蔵の掛け合いですね。キャンディーズで作詞してた穂口雄右さんに浪曲を教えてもらって、浪曲をネットで検索してヒットしたのがその動画だったんです。忠臣蔵は知らなかったですけど、語りがあって歌みたいなのもある、こんなジャンルがあるんやって面白いと思った記憶があります。
―その時点で面白いと思いましたか。
幸:内容はわからなかったですけど、形が面白いと思いました。
「入門を決意する迄の期間はどれ位?(虹色音楽畑)」
幸:最初に三波春夫と村田英雄の掛け合い浪曲を聴いて、面白いとは思ったんですけど、さすがに自分がやることはないと思って2カ月くらい置いてたんです。それでも、やっぱり気になりだして、調べたら大阪で教室がやってることがわかったんです。ちょうどその時が大阪に引っ越す前だったから、それで教室に電話して申し込んだ感じですね。だから1月に浪曲を知って、3月に師匠の教室を行って、その場で入門志願しましたね。それで入門できたのは半年後の9月ですね。
―入門はすぐには認められないのですね。
幸:師匠からは大学通いながら一席覚えてみなさいと言われて、それで「知恩院」を覚えて、8月に師匠の前でやって合格して、9月に親を連れて行って入門ですね。
「浪曲のどんなところが好きで浪曲師になりたいと決めたのですか?(岡村さん)」
幸:入門した時は(浪曲が)新鮮だったんやと思います。一人で演じて語って歌って、三味線がいて、何でもできる自由やと思ったんです。最近の音楽って売り方だったり、音の繋ぎ方に力が注がれてて、新しい音楽を作ることにあんまり力が入れられてない気がしてたんです。それに比べて、浪曲は今からでも新しいことができて発展していきそうな気がしたんです。
―浪曲師になるまではバンドで音楽に熱中されてたのですよね。だからこそ、そこと比較して浪曲の魅力を感じたのですね。
幸:それと、元々ブルースが好きで、ブルースと似てる思ったこともあります。語っていく感じや音階が近かったり、即興的な部分があったり。オシャレ過ぎないというか、民族性でている感じが好きなのだと思います。日本人らしいというか。
「浪曲又は京山幸枝若師匠を知ったキッカケは? (虹色音楽畑)」
幸:うちの師匠知ったのはたまたまです。ネットで検索してヒットして、教室をやってるのがわかったから行ってみようと思ったというだけです。
―浪曲を知ったのは作詞家の穂口雄右さんにツイッターで相談して教えてもらったのですよね。
幸:それまで音楽をやってきて、今後自分がどういう方向性でいくのか迷った時に、自分の好きな穂口さんに相談してみたんです。その時のやりとりがまだ残ってて。(スマホの画面を見ながら)たぶん自分はどういう練習をしたら良いですかみたいなこと聞いたんやと思います。それに対して、「あらゆる発声法を学習することが大切です。民謡や浪曲も大切です。(穂口さんの言葉)」これです!
―この一文で!
幸:これで浪曲って何やろって調べて、三波春夫と村田英雄の掛け合い浪曲を観たんです。
―君は浪曲をした方が良い!みたいなメッセージがあったのかと思ってました。
幸:技術として聴いといた方が良いよっていう話やったんですね。
―何気ない一言が幸太さんの人生に大きな影響を与えたのですね。
3.皆様からの質問:浪曲関連
「幸枝若節にハマって、います。幸太さんには是非、浪曲江州音頭の任侠赤城山を舞台にかけて頂きたいです。浪曲を広めていく上でまた、幸太さんをより売り出していくのに、万人受けするインパクトのある演目だと思いますが、いかがでしょうか (藤田さん)」
幸:まだ江州音頭は覚えてないのでやりたいですね。そもそも今はあんまり浪曲師が出れる櫓がないんですよね。だから河内音頭しか覚えてなかったんですけど、芸の一つとしていずれは覚えるかと思います。いつ披露できるかはわからないですけど。
「プロ浪曲師になって初めてギャラを手にした時の感想。(匿名希望)」
幸:何の時やろ…。覚えてないな…。刑務所の慰問に行った時やと思うんですけど、特に感想は覚えてないですね。
―それで何か買ったとかもなく。
幸:普通に生活費になったのかと(苦笑)。
「幸太さんが今コラボ、共演したい人は 誰ですか?実現難しいとか、考えず教えてください。(宇都さん)」
幸:町田康さんが昨年の十三浪曲寄席が終わった後にまたいつかバンドとかでもイベントでご一緒したいですねって言ってくださったので、これは本当に実現したいですね。他に誰でも良いのであれば、エレファントカシマシの宮本浩次さん。
―宮本浩次さんならコラボで何をしたいですか。
幸:対談とかしたいですね。うちの師匠と憂歌団の木村充揮さんが共演した会が過去にあって、その時は木村さんのライブ、二人のトーク、浪曲という流れだったんですけど、その会がすごく良くて。まず木村さんのライブが最高で、トークもめちゃくちゃ盛り上がって、その後に師匠が「竹の水仙」やったら、これまで観た中で一番ウケてて。だから、ステージで無理にコラボしなくてもああいう感じで交流するのもいいなと思いますね。
他に誰かな…。もっと妄想して色々考えたいですね。
(後日幸太さんからメールが来て)
幸:(メールより)又吉直樹さんです!お笑い芸人と小説家を両立してらっしゃることにも興味がありますし、浪曲を聴いた感想を聞いてみたいです。
「『忠治と火の車おまん』をちょうどよい場面で時間がなくなったということで、途中で終わってしまったのですが、あの続きをきくのは、どうしたらよいのでしょうか。 「吉良の仁吉」のBL版も最後までききたいですが、もしかして、そこまでで終わりの話でしょうか?(宇都さん)」
幸:仁吉の任侠ずラブに関してはまだわからないです。続編はまだできてないですけど、いずれやりたいなと思います。「火の車お萬」はレコードにも続きは入ってないですよね。
―入ってなかったように思います。
幸:そしたらうちの一門では聴けないかもしれない…。
―幸太さんや幸枝若一門ではあのネタの続きは持っていないということですね。
幸:昔はあったかもしれないんですけど、聴いたことないですし、少なくとも自分はできないです。
―もし今後覚える機会があれば、覚えたい気持ちはありますか。
幸:あそこで終わるから面白いんじゃないですかね。
―続きを聞いてみたいお客さんはけっこういらっしゃると思いますよ。
幸:講談とかに残っていれば、そこから自分が書いてやる可能性はゼロではないですけど、今のところできないですね。
―まだわからない感じですね。
幸:もっと書きたいことがあるから、なかなかそっちに手が回らないですね。
「町田康さんからは、キリスト伝とか、コンゴの話など、提案されてましたが、新作(創作)どんなものを考えていますか? (宇都さん)」
幸:5月の独演会でネタおろしする超新作浪曲の一つは宗教色はそんなに出してないですけど、キリスト教圏の話で、ハイジです。これはむちゃくちゃ笑いに攻めてる。コントに近いような感じです。
―新作は笑いに寄ったものを中心に書いていきたいと考えていますか。
幸:ハイジの方は完全に笑いにいってます。もう一つは作っていくうちに浪曲っぽくなりましたけど、演出は工夫してます。たぶん今までにないようなこともしますし。だから、浪曲っぽいのも笑いに寄ったのもどっちもやりたいですね。あと、将来やりたいのは、まだ浪曲になってない古典作品を掘り起こして浪曲にしたいですね。
―まさに町田康さんの「ギケイキ」のような。
幸:本当にそうです。でも、それをやるのはもう少し落ち着いてからかなと思ってます。今はもっと今しかできない攻めたことをやります。
―続いて浪曲の番外編です。
「幸枝若師匠について どんな師匠ですか?芸人の世界って面白いし、きびしい世界と思いますが、常に言われることや、気をつけることなど、どんなことをよく言われ、受け止めているのでしょうか。(宇都さん)」
幸:誤解のないように言うと優しい方です。舞台のまんまです。あのキャラクターです。ただ、弟子として芸の面では厳しく言われますし、稽古してないのはすぐ見抜かれたり、舞台でアカンところがあれば言われます。でも、それも優しさですからね。
―そうですね。
幸:師匠は(幸太さんの浪曲を)いつも後ろで聴いてくださってますし。良かったら、それも言ってくださる。方法論も教えてくださるけど、「おれはこう考えるけど、お前はどう思うか」って言われますね。一つの決まったやり方を教えてもらうよりは、広い意味で考え方を教えてもらってる感じです。
―個性を伸ばそうとしてくだってますね。
幸:あと、よく言われるのは「うちの一門は酒からやぞ」とか。芸人らしさも大切にしている方やと思いますね。
―師匠の前で気をつけていることはないですか。
幸:師匠が「飲めよ」って言って下さるので、記憶は飛ばさないように気をつけてます。後で覚えてないのは怖いので。
「10年後のビジョンをお聞かせください。京山幸太として、きらちゃんとして、プライベート」
幸:お笑い芸人としては、一つの型に固執せずにウケる形を探していくので、きらちゃんかどうかすらわからないですね。京山幸太としてお笑いやってるかもしれないです。それで、できたら20代で売れる。この10年以内に一発で良いから、R-1の決勝、準決勝に残れるくらいになるのが目標ですね。
―10年以内に売れるのが目標ですね。
幸:10年でも遅いかなと思ってるんですけど。
―そして売れたらもういないという可能性もある。
幸:その可能性もありますね。
―では、浪曲はどうでしょうか。
幸:浪曲師としては古典を改変したり洗っていくようなことをしたいなと思います。節も自分の味を出していけるようになってないとアカンと思いますね。そして、プライベートは特にないですね…。プライベートの目標ってどんなのでしょうか(笑)。
―どこに住んで、結婚しててとか…。
幸:それならもちろん大阪にいたいし。飽き性やから、3つか4つ部屋を借りて、その日の気分で帰る家を選びたいですね。所帯を持って落ち着くのは嫌でもないけど、願望もないし、そっちはある意味どっちでも良いんです。あとは本をもっと読みたいです。
―本ですか。本を書くのはどうですか。
幸:書きたい気持ちもあります。それは30代後半くらいかもしれないですけど。才能があるかどうかにも寄りますし、今の読書は浪曲のためでもありますけど、書きたい気持ちもあるのは確かです。
―小説ですか。
幸:小説なのか、エッセイなのかわからないですけど、文章書きたい気持ちがあります。執筆にもトライしたいのが10年後くらいかもしれないですね。
4.皆様からの質問:プライベート
「身長 体重 3サイズ 靴サイズ(匿名希望)」
幸:3サイズ測ったことないですけど、身長167.5センチ、体重は52~68㎏の間を彷徨ってます。靴は26.5㎝です。この情報いります?(笑)。せっかくやから、ウィキペディアに載せといてほしいですね。
「髪の色、今後紫や桃色など他の色に変える予定はありますか?(ちゃんぽんさん)」
幸:ないとは言えないですけど、今は浪曲師らしく落ち着こうかなと思ってて、それでぶっ飛んだことやる方が浪曲師と行動のギャップがあるかなと思って黒くしてるんです。前は浪曲とのギャップで髪を明るくしてたけど、今は浪曲師としてちゃんと浪曲をやった上で、それとはギャップのある活動をしたいと思ってるので。だから、桃色にする可能性はなくはないけど、その時の考え方次第ですね。
「好きな女性のタイプは? 女優の名前でも可。(虹色音楽畑)」
「これまでにこの人なら結婚アリ!と思ったお相手はいますか?(匿名希望)」
幸:結婚はなしと思ったこともないですし、深く考えてない部分かもしれないです。タイプは篠原涼子さんとか吉田羊さんとか年上の人ですかね。
―篠原涼子さんも吉田羊さんもクールでしっかりしてそうな感じですね。
幸:そうですよね。そういうタイプ以外やと佐藤仁美さんも好きですね。キャピキャピしてる人は苦手かもしれない。落ち着いて話せる人が良いですね。
「長所(顔以外)短所(飽き性以外)(匿名希望)」
幸:面接みたいですね(笑)。長所は人と揉めない。あと、飽き性やけどネタを覚える時とかは一つのことをずっと続けられるとか。短所は飲み過ぎるとこかな(笑)。あと、人との距離感が詰められないことですね。だから、人と揉めないのかもしれないですけど。良くも悪くも遠慮してしまう。だから友達が少ない…(笑)。飲みに行くのも大体一人やし。仲良い人はいますけど。交友関係を広く持てなかったり、営業できなかったり、人に対して積極性がないのはアカンとこやなって自分で思います(笑)。千原せいじさんみたいな人が羨ましく思いますね。
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