京山幸太 2020年も飛ばします。2020年2月号より
目次
1.2020年目標
2.R-1出場振り返り
3.ワッハ上方落語で開催中「芸人さんは多才だ!」
4.誕生日の独演会!京山幸太色が全開か!
5.浪曲版「子は鎹」ネタおろし
1.2020年目標
―まずは2020年の活動に関することから聞いていきたいと思います。今年目標にしていることはありますか。
幸:年末の振り返りでも言ったことになるんですけど、2019年は種を蒔いてきたので、今年はそれをちょっとずつ収穫できるようにしていきたいと思いますね。
―収穫というと、浪曲の公演が増えることなどでしょうか。
幸:公演ももうちょっと増えるといいですかね。ただ、師匠にもそれ以上無理に増やす必要ないんちゃうかとも言われてて。一席一席おろそかになってしまうかもしれないので。
―確かに単純に公演数にこだわると、毎回演目も変わらず、来ているお客さんは同じということにもなりかねないですね。中身にもこだわる必要があるかと思います。
幸:なので、浪曲の会は今ぐらいの数でいいかなと思います。あとは他ジャンルの人と共演する機会が増えてきてほしいですね。浪曲の舞台は100~120くらいなので、色んな人と共演合わせて200とかいけばいいかな。
―200でも多いですもんね。
幸:その数はもう少し先の話になるかもしれないですけどね。とにかくあんまり増やしすぎてもと思ってるので、ひとつひとつの規模を大きくしたり、質を上げていくことが大事ですね。
―なるほど。個人的には、幸太さんはお笑い芸人として活動もされていて、浪曲を知らない人が浪曲に興味を持つきっかけになる存在だと思っています。なので、その指標としてツイッターのフォロワー数一万人や浪曲界一位を目指してほしいなと思うのですが、どうでしょうか。
幸:なるほど。一年でそこまでいくかはわからないですけど、そういう意味では指標になるかもしれないですね。あと、師匠に新年の挨拶に行った時に抱負を聞かれるんですけど、その時には去年と同じで批判されるくらい新しいことをすると言いました。去年はお笑いでは事務所に入り、浪曲では超新作浪曲を作り、なんとなくそれぞれの方向性が見えてきた年やったんで、それをもっと表に出していきたい。具体的な数字ではないですけど、それは師匠にも言いましたね。
―去年やってきたことをより強化させていく感じでしょうか。超新作の数も増やしていきますか。
幸:超新作あるいは新作を定期的にするというのも有りかと思うんですけどね。
―ツイッターにそのようなことを書いているのも見ました。実現すると、お客さんの立場としては面白いでしょうしね。新作を出し続けることで幸太さんらしさも鮮明になっていく気もします。
幸:そうですね。自分で浪曲を書く時には、古典の延長線上にあるだけの浪曲をしないようにしてて、それ浪曲かっていうところくらいまでいきたいなと思いますね。それこそ、批判されるくらいでいいから、こっちに振り向かせられることをしなアカンと思うんです。
―よりぶっ飛んだ感じですかね。
幸:そうですね。そこでより実りがないとアカンなって感じですかね。あと、今年の目標は…ちょっとずつでもテレビ出ていかなアカンなとは思いますね。浪曲番組以外の全国ネットのテレビに出たいですね。
―それは是非とも実現してほしいですね。お笑い芸人としての大きな成果になると思います。
幸:そうですよね。古典で売れる人もいるんですけど、古典やと絶対に時間かかるんですよね。でも、お笑いは何かのきっかけで急に陽の目を浴びることもある。ソニーの人からもその両方があるのは鬼に金棒やって言われてて。だから、その両方でやることが大切やと思うし。将来はじっくり浪曲をやりたいんで、あんまり売れるのに時間かけてられへんというのも思っています。
―お笑いは浪曲とは別に目指す方向性や期限があるのですね。
幸:そっちはそっちで焦りながら、浪曲は変に焦らずにちゃんとやっていかなアカンところですね。
―急に聞いたにも関わらず、色々考えながらお話いただき、ありがとうございます。目指していく方向などよくわかりました。
2.R-1出場振り返り
―さて、次は年末に出場したR-1についてです。1回戦で予選落ちしてしまいましたが、ご自身の感想としてはいかがでしたか。
幸:びっくりしましたよ!めちゃくちゃスベりましたよ!(笑)
―ぼくR-1見に行ったんですよ。時間間違えて、幸太さんは見逃したんですけど。
幸:見られてなくてよかったです(笑)。
―結果は残念ですが、経験としてはすごい大きかったのではないですか。誰も幸太さんのことを知らない超アウェーの中で舞台に立つことはなかなかないと思います。
幸:本当にそうです。
―お客さんも笑わせてくれというスタンスで見てるからハードル高いでしょうし。ぼくもR-1の予選を初めて見て、2分間で笑わせるって本当に難しいだろうとひしひしと感じました。
幸:M-1は漫才を競うんですけど、R-1って一人やったら何やってもいいから、型がない分逆に難しかったりするんですよね。出てみると、ハリウッドザコシショウさんとか決勝にいく人はすごいなって思いました。
―実際に舞台に立つと、浪曲とは違う緊張感ですか。
幸:浪曲よりずっと緊張します。やっぱり馴れてないですから。ソニーのライブも毎回緊張しますし。浪曲の場合は古典ってそもそも面白いですもん。あとは演者のレベルだけであって。お笑いは自分のネタがウケるかどうかがわからないから、めちゃくちゃスベるかもしれないですし。
―ネタ作ってるのもご自身ですし、ウケる保障はどこにもないですもんね。すごいセンスを見られてる感じがします。
幸:だから、めちゃくちゃ怖いですね。お笑い芸人の人たちはホンマにようやってんなって思いますね。
―幸太さんも同じようにお笑い芸人をしているからこそ、得ているものもありそうです。
幸:そうですね。浪曲は先人の残してくれたものがあるので、その有り難さをすごい感じるようになりますね。自分の場合も先代幸枝若のファンの方が応援してくれることもありますし。浪曲界全体を応援して、自分も応援してくださる人もいますし。
でも、お笑いは本当に一代限りで、立場を築き上げなアカン。自分が悪ければウケないし売れない世界なので。去年、(月亭)八方師匠も「芸能界は所詮個人プレーで個人の才能や力の世界や、力ある人は絶対に売れるし、力ないやつは売れへん。所詮個人のプレーということは覚えといてくださいね。」って話してくださって。ホンマにその通りやなと思ってて、組織や協会で動くことは大事なんですけど。結局売れる売れへんは個人の力であって、何の言い訳もできないんで。
―芸能界では売れないと結果的にお金にもならないですしね。
幸:我々浪曲師はその点で、受け継いできたものは非常に有難いことで守っていかなアカンなって思うけど、そこだけに甘えたらアカンとはすごい思ってます。これがR-1やお笑い芸人をやって感じてることですね。それで、お笑いのほうは来年までに自分に向いてるやり方を見つけたいですね。
―自分の型みたいなものでしょうか。
幸:そうですね。先月の事務所ライブでは一人コントみたいなのをしてみたんですけど、びっくりするくらいスベって(笑)。
―本当ですか。R-1に続いて。
幸:二連敗です。それでこういうのは向いてへんって気がついて。
―お笑いライブはそうやって、ネタを試す場でもあるのですね。
幸:そうなんです。スベらないと何がウケるかもわからなくて。自分ではどうしても自分を冷静に見れなくて、お笑いやってそれが痛いほどわかりました。
―スベるかもしれないけど、挑戦し続けるのは精神的に削られそうですが、成長に繋がりそうな気がします。キャリア的にも今しかできないことかもしれないですね。
幸:そうですね。スベれるうちにスベりたい。試せるうちに試したいので、今やれるだけやりたいなって思います。
3.ワッハ上方落語で開催中「芸人さんは多才だ!」
―それでは幸太さんの女装写真が展示されているワッハ上方の企画展示「芸人さんは多才だ!」のお話を聞いていきたい思います。
幸:本当にオファーしてくださってびっくりしました!
―どういう経緯でオファーが来たのですか。
幸:ワッハの担当者の方が今回の展示するに当たって、師匠のところに浪曲親友協会から出展できる人はいないか相談にきていたんです。そこに自分がダメ元で「京山幸太の女装写真展」はどうですかねって言ってみて、その場では決まらなかったんですけど。その後に電話が来て、実際にやるということで話が進みましたね。
―幸太さんから売り込んでたんですね。
幸:まさか本当になるとは思ってなかったんで。ワッハ上方さんノリが良いなって思いました。
―展示されている写真はいつ頃に撮ったものですか。
幸:ここ2年、3年くらいを遡って、そこからベスト版みたいな形で選んでます。
―おぉ!特に気に入ってる写真はあるのですか。
幸:そんなのないですよ(笑)。
―即決できた写真とかは。
幸:ツイッターで「いいね」が200を超えた写真はすぐ決めましたね。だから、「いいね」順で決めていきました。あと、別の仕事ですけど、喜楽館の女流ウィークに出してもらえるのも嬉しいですね。恵子姉さんもまどか姉さんも都合が合わない日があって、そこであやめ師匠が幸太くんなら違和感ないんちゃうかと言ってくれはったみたいです。色んな仕事もらえるのは嬉しいですね。
4.誕生日の独演会!京山幸太色が全開か!
―5月9日の誕生日に開催される「バースデーはZAZAっと!バースデー!!」では超新作浪曲が2席も披露されるようですね。
幸:そうなんです。一席はもうできてて、もう一席はまだ作ってるところなんです。
―エッジの効いた浪曲になるのでしょうね。
幸:まだ書けてない方はちゃんとウケる浪曲になりそうですけど、もう出来上がってる方はもしかしたらスベるかもしれない。
―(笑)。
幸:攻めてる感じで(笑)。
―話の内容は幸太さんのオリジナルですか。
幸:いえ、みんなが知ってる話を脚色していって作ってます。
―なるほど。公演の後半はショーという珍しい形ですね。
幸:そうですね。若菜さん、幸乃さんにも出ていただいて、8分ずつくらい与えて、自由にもたせてもらおうと思います。
―それはお二人にとっては珍しい機会ですね。
幸:浪曲師として、浪曲するのは当たり前なんですけど、浪曲だけやればええんやったらアマチュアでやったらいいって師匠に言われたのがその通りやなと思って。今回は二人にむちゃぶりしたろと思って、8分ずつ好きにやってもらいます。
―試練を与えてるのですね。二人にはもう言ったのですか。
幸:まだ言ってないです。そろそろ言います。自分も(桂)ちきん兄さんの会で女装してロミオとジュリエットやれと言われて、やったし。そういうのって本当に大事やと思うんですよね。
―なるほど。それに、今回は幸太さんの独演会なので、二人にとってもホームですし、やりやすい環境かもしれませんね。
幸:そうなんですよ。本気でやった結果、別にスベってもいいし。だから、二人がなにをするのかも見所の一つですね。
―幸太さん自身は5変幻と宣伝に書いてましたが、五回も登場するのですか。
幸:そうですね。最初に浪曲があって、新作浪曲があり、超新作浪曲、きらちゃん、踊り。これで5つです。ゲストを呼ぶことも考えたんですけど、今回はどんだけ自分一人で好きにできるかと言うことをやろうと思うので。不安もありますけど、この公演は本当に楽しみですね。
―現時点での幸太さんの集大成がそこで見られるといった感じでしょうか。楽しみにしています。
5.浪曲版「子は鎹」ネタおろし
―染八さんとの会で「子は鎹」をネタおろしするのは注目しています。
幸:元々師匠同士が仲良くて、二人会もやっていたので、弟子同士も会ってたんです。それに染八兄さんが自分よりも年齢も芸歴も二つ上で、近いこともあって、一緒にやりたいなとは元々思ってたんですよ。それでこちらからお声掛けしました。
―その時点で幸太さんが「子は鎹」をすることまで考えたのですか。
幸:「子は鎹」をすることに関しては、それ以前の話になるんです。うちの師匠が小染師匠の会に出た時に、浪曲版の「子は鎹」を作ってて、それを小染師匠から「幸太くん、これ君にあげるから洗い直してやったらどうや」って言ってくださってたんです。だから前からやるチャンスはずっと狙ってたんです。
―なるほど。持ちネタにもできそうですか。
幸:自分がちゃんと洗えばできる内容かなと思います。
―落語で有名な演目ですし、持ちネタにできると強みになりそうですね。幸太さんが人情ネタをするイメージはあまりないのですが、稽古とかしてみてどうですか。
幸:確かに人情ネタはあまりやらないですね。「門出の一里塚」くらいでしょうか。あと落語家さんのネタやから、笑わせ方が自分がいつもやってるやり方とは違うんですよね。そこを自分のやり方に変えたりしてますけど。
―笑わせ方も、人情味も楽しみにしてます。感動させてください。
幸:そう言われると難しいですね(笑)。
―プレッシャーを与えてしまっていますか(笑)。それでも期待してますので、頑張ってください。
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